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4 歯車の寸法計算

4.2 内歯車(インターナルギヤ)

内歯車は、円筒の内側に歯があり、平歯車とかみ合います。平歯車の歯溝の部分が歯になった歯車です。平歯車の歯形は凸歯形ですが、内歯車の歯形は凹歯形であり平歯車とは逆なのが特徴的です。転位内歯車の寸法計算方法及び内歯車の干渉について紹介します。

(1)転位内歯車の計算
図4.4には内歯車と平歯車のかみ合いを示しました。
この内歯車と外歯車のかみ合いにおいても大切なのは、かみ合いピッチ円直径dwとかみ合い圧力角αwです。
これらは、転位歯車の中心距離a をもとに、次の式にて簡単に求まります。

 

 

表4.6には転位内歯車と平歯車の計算を示します。
標準歯車を計算するには、x1= x 2= 0 として計算をすすめます。

 

図4.4 内歯車と平歯車のかみ合い
(α=20°、z 1=16、z 2=24、x 1=x 2=+0.5)

 

上記計算は、歯車計算ソフト GCSW for Webで簡単に計算できます。こちら

 

表4.6 転位内歯車と平歯車の計算(1)

番号 計算項目 記号 計 算 式 計 算 例
平歯車(1) 内歯車(2)
1 モジュール m 設定値 3
2 基準圧力角 α 20°
3 歯   数 z 16 24
4 転位係数 x 0 +0.516
5 インボリュートαw invαw 0.061857
6 かみ合い圧力角 αw インボリュート関数表から求める 31.321258°
7 中心距離修正係数 y 0.4000
8 中心距離 a 13.2
9 基準円直径 d zm 48.000 72.000
10 基礎円直径 d b d cosα 45.105 67.658
11 かみ合い
ピッチ円直径
dw 52.7998 79.1997
12 歯末のたけ h a 1
h a 2
(1+x 1)m
(1-x 2)m
3.000 1.452
13 歯たけ h 2.25m 6.75
14 歯先円直径 d a 1
d a 2
d 1+2h a 1
d 2-2h a 2
54.000 69.0960
15 歯底円直径 d f 1
d f 2
d a 1-2h
d a 2+2h
40.500 82.596

歯車諸元として、初めに中心距離 a を与えられて、転位係数x1x2を求める場合は、表4.6の4番から8番までを逆に計算します。その計算法を表4.7に示します。

 

表4.7 転位内歯車と平歯車の計算(2)

番号 計算項目 記号 計 算 式 計 算 例
1 中心距離 a 設定値 13.1683
2 中心距離修正係数 y 0.38943
3 かみ合い圧力角 αw  31.0937°
4 転位係数の差 x 2-x 1 0.5
5 転位係数 x   0  0.5

 

内歯車や平歯車をピニオンカッタで歯切りするとき、切削された歯車の歯たけや歯底円直径はこの計算式による値と異なる場合があります。これは、歯車やピニオンカッタの転位が影響する為ですから、正確な寸法を得るには、ピニオンカッタの転位係数に基づき計算する必要があります。

 

(2)内歯車の干渉

内歯車と外歯車のかみ合いにおいては、インボリュート干渉(歯元干渉)、トロコイド干渉、トリミング(逃げ干渉)という3つの代表的な干渉があります。

 

(a)インボリュート干渉(歯元干渉)

インボリュート干渉とは平歯車の歯元と内歯車の歯先が干渉するものであり、平歯車の歯数が小さいときにおこりやすい干渉です。
この干渉がおきない条件は式(4.4)で与えられます。

 

ここでαa 2 : 内歯車の歯先圧力角

d a 2 ≧d b 2 (4.7)

基準圧力角α=20°の標準内歯車においては、z 2 > 34でなければ、内歯車の歯先円は基礎円よりも大きくなりません。

 

(b)トロコイド干渉
トロコイド干渉とは平歯車の歯先が歯溝から抜け出る時に、内歯車の歯先と干渉するものであり、内歯車と平歯車の歯数差が少ない時におこります。
この干渉がおきない条件は式(4.8)で与えられます。圧力角(α)など、角度の単位はラジアンで計算してください。
 

ここで

ここでαa 1は平歯車における歯先圧力角であり

 

基準圧力角α=20°の標準内歯車と標準平歯車のかみ合いにおいては、歯数差z2 - z 1が9以上であれば、トロコイド干渉はおきません。

 

(c)トリミング
トリミング(逃げ干渉)とは正常にかみ合っている内歯車と平歯車において、そのかみ合い位置から平歯車を半径方向に移動することができない干渉であり、内歯車と平歯車の歯数差が少ない時におこります。
この干渉がおきない条件は式(4.11)で与えられます。

 

ここで

 

この干渉が発生しても、歯車を軸方向に移動してかみ合わせれば、歯車の通常のかみ合いには全く支障はありません。
しかし、ピニオンカッタで内歯車を創成歯切りするときは、これが重大な問題となってきます。つまり、この干渉が発生した場合、ピニオンカッタが内歯車から逃げるときに、この逃げ干渉によって工具を破損する危険があるからです。
工具圧力角α0 =20°の標準内歯車を転位なし(x 0 = 0)のピニオンカッタで歯切りするときの、トリミング限界内歯車歯数を表4.8(1)に示します。

 

表4.8 (1)トリミング限界内歯車歯数  (α0=20°, x0 =x2=0)

z 0 15 16 17 18 19 20 21 22 24 25 27
z 2 34 34 35 36 37 38 39 40 42 43 45
 
z 0 28 30 31 32 33 34 35 38 40 42
z 2 46 48 49 50 51 52 53 56 58 60
z 0 44 48 50 56 60 64 66 80 96 100
z 2 62 66 68 74 78 82 84 98 114 118

この表の、z 0 = 15~22においては、インボリュート干渉が発生します。(z 0 はピニオンカッタの歯数です)

表4.8(2)には、転位ピニオンカッタにて標準内歯車を歯切りするときの、トリミング限界内歯車歯数を示します。このとき x0 = 0.0075z 0 + 0.05としました。

 

 

表4.8 (2)トリミング限界内歯車歯数  (α0=20°, x2 =0)


z 0 15 16 17 18 19 20 21 22 24 25 27
x 0 0.1625 0.17 0.1775 0.185 0.1925 0.2 0.2075 0.215 0.23 0.2375 0.2525
z 2 36 38 39 40 41 42 43 45 47 48 50
 
z 0 28 30 31 32 33 34 35 38 40 42
x 0 0.26 0.275 0.2825 0.29 0.2975 0.305 0.3125 0.335 0.35 0.365
z 2 52 54 55 56 58 59 60 64 66 68
z 0 44 48 50 56 60 64 66 80 96 100
x 0 0.38 0.41 0.425 0.47 0.5 0.53 0.545 0.65 0.77 0.8
z2 71 76 78 86 90 95 98 115 136 141

この表4.8(2)の、z 0 = 15~19においては、インボリュート干渉が発生し、内歯車の歯先における正しいインボリュート歯形の一部分が、削り取られてしまいます。

 

図4.5 インボリュート干渉とトロコイド干渉

 

図4.6 トリミング

 

ご意見ご希望は技術課まで

 

こちらの技術資料は冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があります。最新情報は最新カタログでご確認下さいますよう、お願いいたします。

 

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