円筒ウォームギヤとは、ねじ状の歯車である円筒ウォームとこれとかみあうウォームホイールとからなる歯車対のことです。食違い軸の歯車として最も多く使用されているもので、軸角は90°が一般的です。歯数2枚以上のウォームのことを多条ウォームといいます。
図4.15のようにウォームとは1枚以上の歯数をもったねじ状の歯車で、ピッチ円筒上でツルマキ線はγの基準円筒進み角をもち、そのツルマキ線は1回転に対してリードP z だけ進みます。
図4.15 円筒ウォーム(右ねじれ)
円筒ウォームの歯形はJIS B 1723円筒ウォームギヤの寸法において次の4種類が規定されています。
修整後の軸平面圧力角αx を修整前のαx 'よりも大きくすると、式(4.25)を満足させるには、修整後の軸方向ピッチP x を修整前のP x 'よりも大きくする必要があります。
つまりこの方法は、軸平面圧力角αx と軸方向ピッチP x を大きい値に修正する方法です。
図4.21の修整したウォームと標準のウォームホイールのかみあいのA点におけるすき間(クラウニング量)は次の式にて近似的に計算されます。
ここに
d 1
:
ウォームの基準円直径
k
:
係数、表4.27又は図4.20から求めます。
表4.27 係数k の値
αx
14.5°
17.5°
20°
22.5°
k
0.55
0.46
0.41
0.375
図4.20 係数k の値
表4.28にはウォームのクラウニングの計算を示します。
表4.28 ウォームのクラウニングの計算
番号
計算項目
記号
計算式
計算例
1
軸方向モジュール
m x '
注、これらは修整前のデータです。
3
2
歯直角圧力角
αn '
20°
3
ウォームの条数
z 1
2
4
ウォームの
基準円直径
d 1
44.000
5
基準円筒進み角
γ'
7.765166°
6
軸平面圧力角
αx '
20.170236°
7
軸方向ピッチ
P x '
πm x '
9.424778
8
リード
P z '
πm x z 1
18.849556
9
クラウニング量
C R
歯当たりの大きさを考慮して決める
0.04
10
係 数
k
表4.27から求める
0.41
※修整後のデータ
11
軸方向ピッチ
P x
9.466573
12
軸平面圧力角
αx
20.847973°
13
軸方向モジュール
m x
3.013304
14
基準円筒進み角
γ
7.799179°
15
歯直角圧力角
αn
tan-1(tanαx cosγ)
20.671494°
16
リード
P z
πm xz 1
18.933146
図4.21 クラウニング量を計算する点A
(4)ウォームギヤのセルフロック
ウォームギヤの特徴の1つに、セルフロックという現象があります。このセルフロックとは、ウォームホイールからウォームを回すことができない状態のことで、
これを利用することにより、昇降装置などにおいて、停止位置を簡単に保持することができるとか、その他にも、いろいろ有効な使い方が可能です。
ウォームギヤにおいては、セルフロックするものと、セルフロックしないものがあり、それにはいろいろな要素が影響します。
軸受損失とか、潤滑油かくはん損失などによるブレーキ力が作用しない理想的な状態を仮定して、セルフロックするかしないかを判断するには、歯面に作用する力によります。 歯車中級編8.5ウォームギヤに働く力において、ウォームホイールが駆動歯車のとき、ウォームの接線力F u 1は次の式にて計算されます。
F u 1 = F n (cosαn sinγ - μcosγ)
(4.27)
この接線力F u 1が0より大きければ、セルフロックはしません。
この式から、セルフロックに影響する要素としては、歯直角圧力角αn 、基準円筒進み角γと摩擦係数μの3つであることがわかりますが、このなかで、静摩擦係数μは潤滑状況や、表面粗さなどによって大きく影響を受ける不確定要素です。
式(4.27)において、F u 1=0として、αn =20°のときの基準円筒進み角γと摩擦係数μの関係を示したのが図4.22です。
実際のウォームギヤセットにおいて、摩擦係数μの値を正しく算出するのは、非常に困難であるとともに、実際には軸受損失とか潤滑油かくはん損失などによるブレーキ力が作用します。
これらを全て正確に把握することは非常に困難ですから、ウォームギヤがセルフロックするかしないかを判断するのも非常に困難です。
確実に言えることは、基準円筒進み角γが小さくなればなる程、セルフロック性は向上するということです。