歯車の歯当たり

8 歯車の組立精度

8.3 歯車の歯当たり


歯車の歯当たりは、歯車の精度と同様に、歯車の騒音とか効率に大きな影響を与える要素の一つです。
歯当たりを良くするには、

  • 歯すじ修整
    クラウニングとかエンドレリーフをします。
  • 歯車精度の向上
    歯車研削とかラッピングをします。
  • 歯車箱の精度向上
    平行度、直角度などを精度よく加工します。

これらは全て、歯車又は歯車箱の加工方法、加工精度に関するものです。
このような努力にもかかわらず、最終組立時の歯当たり検査にて、歯当たりが問題になる場合があります。
この場合、かさ歯車とかウォームギヤにおいては、歯車を軸方向に動かすことによって、ある程度は歯当たりを改善することができます。
歯車の歯当たりは、歯車の精度の一部分であり、特にかさ歯車とかウォームギヤにおいては、重要な要素となります。かさ歯車、ウォームギヤは、平歯車及びはすば歯車に比較して、歯車の精度を測定することが困難であり、最終的な歯車精度の確認方法として、この歯当たり検査は非常に大切です。
この歯車の歯当たりに関しては、JGMA1002-01(2003)に規定されています。
表8.4 歯当たりの割合
歯車の種類
精度等級
歯当たりの割合(%以上)
歯すじ方向
歯たけ方向
円筒歯車
N5,N6(旧JIS 1,2)
70
40
N7,N8(旧JIS 3,4)
50
30
N9,N10(旧JIS 5,6)
35
20
かさ歯車
ウォームホイール
1,2
50
40
3,4
35
30
5,6
25
(かさ歯車)
20
20
(ウォームホイール)
注.表8.4の歯車等級は下記表の規格となる
円筒歯車
JIS B1702-1:1998
(旧JIS)円筒歯車
(旧)JIS B1702:1976
かさ歯車
JIS B 1704:1978
ウォームホイール
KHK W 002
ここで歯当たりの割合とは、それぞれの有効歯すじ長さ及びかみ合い歯たけに対するものです。
また、かさ歯車やウォームギヤの歯当たりは馴染み運転を前提としているため、新品時の歯当たりは表の割合より小さくなる場合があります。

8.3.1 かさ歯車の歯当たり

 

かさ歯車の製作において、歯当たり試験機による歯当たりとバックラッシの検査は必要不可欠です。
この検査によって、歯車の総合的な性能をみることができます。
この歯当たり試験機による検査においては、歯車に軽いブレーキ負荷をかけた状態で歯当たりを付けます。
この時の理想的な歯当たりは、図8.2のように、歯幅中央小端寄りです。かさ歯車においては、負荷が大きくなるにしたがって、この歯当たりは歯幅中央へ移動していきます。
かさ歯車使用時の全負荷がかかったときに、歯当たりが歯幅中央にくるのが理想的です。
図8.2 中央小端当たり
このように、理想的な中央小端当たりに、かさ歯車を製作しても、歯車箱の加工精度が悪かったり、歯車の取付位置が悪いと、その歯当たりも悪くなってしまいます。
このかさ歯車の歯当たりに影響するものには、次の3つの誤差が考えられます。

  1. 歯車箱のオフセット誤差
  2. 歯車箱の軸角度誤差
  3. 歯車の組立距離誤差

これらのうちで、1と2は歯車箱を再加工しなければ、良い歯当たりを得ることはできませんが、3については、大小歯車を軸方向に移動して調整することによって、正しい歯当たりを得ることができます。
このうち3つの誤差は、程度の差はありますが、全てバックラッシの大きさに影響を与えます。
(1)歯車箱のオフセット誤差
図8.3のように、歯車箱にオフセット誤差があると、歯当たりはクロス当たりになります。
これは、歯車箱のオフセット誤差が、あたかも、歯車に歯すじ方向誤差(ねじれ誤差)があるかのように影響するからです。
図8.3 歯車箱のオフセット誤差による歯当たり
(2)歯車箱の軸角度誤差
図8.4のように、歯車箱の軸角に正(プラス)誤差があると、かさ歯車の歯当たりは小歯車(ピニオン)及び大歯車(ギヤ)共に小端当たりになります。
反対に負(マイナス)誤差があると、大端当たりになります。
図8.4 歯車箱の軸角度誤差による歯当たり
(3)歯車の組立距離誤差
図8.5のように、ピニオンの組立距離に正(プラス)側誤差があると、ピニオンにおいては低い歯当たり、ギヤにおいては高い歯当たりになります。これは、ピニオンの組立距離に正誤差があることにより、ピニオンの圧力角に正(プラス)側誤差があるのと同じように影響するからです。
反対に、ピニオンの組立距離に負(マイナス)側誤差があると、ピニオンにおいては高い歯当たり、ギヤにおいては低い歯当たりになります。これはピニオンの圧力角に負(マイナス)側誤差があるのと、同じ現象です。
この組立距離誤差は、組立時のシム調節などにより修正することができます。
図8.5 歯車の組立距離誤差による歯当たり
組立距離誤差はバックラッシの大きさにも影響します。この誤差が正方向に増加すると、バックラッシも増加します。
小歯車(ピニオン)の組立距離誤差は、歯当りに大きく影響します。微小なバックラッシを調整する場合は、大歯車(ギヤ)のみ軸方向に調整するのが一般的ですが、大きくバックラッシを調整する場合は、歯当りに悪い影響がでないように小歯車及び大歯車の両方を軸方向に調整します。

8.3.2 ウォームギヤの歯当たり

 

現在、日本においては、ウォームギヤの精度に関する規格はありません。
あるのは、JGMA1002-01(2003)歯車の歯当たりに関する規格だけです。
このため、ウォームギヤにおいては、歯当たり試験機による歯当たりとバックラッシの検査が最も一般的です。
この歯当たり検査における、理想的な歯当たりを、図8.6に示します。
図8.6 理想的な歯当たり
この歯当たりは、歯すじ方向歯当たりの中心が、多少出口側によっていて、入口側には油膜形成に必要な入口すき間を確保できるようになっています。
このように、理想的な歯当たりにウォームギヤを製作しても、歯車箱の加工精度が悪かったり、ウォームホイールの取付位置が悪いと、その歯当たりも悪くなってしまいます。
このウォームギヤの歯当たりに影響するものには、次の3つの誤差が考えられます。

  1. 歯車箱の軸角度誤差
  2. 歯車箱の中心距離誤差
  3. ウォームホイールの取付位置誤差

これらのうちで、1と2は歯車箱を再加工しなければ、良い歯当たりを得ることはできませんが、3についてはウォームホイールを軸方向に移動して調整することにより、正しい歯当たりを得ることができます。
これらの3つの誤差は、程度の差はありますが、全てバックラッシの大きさに影響を与えます。

(1)歯車箱の軸角度誤差
図8.7のように、歯車箱に軸角度誤差があると、歯当たりはクロス当たりになります。
このクロス当たりは、歯車に歯すじ方向誤差(ねじれ角誤差)があるときにもおこります。
図8.7 歯車箱の軸角度誤差による歯当たり
(2)歯車箱の中心距離誤差
図8.8のように、歯車箱に極端な中心距離誤差があっても、歯当たりはクロス当たりになります。
この誤差があるときは、歯当たりが悪くなるだけでなく、バックラッシの大きさにもかなり影響します。
正(プラス)側誤差があれば、バックラッシは増加し、負(マイナス)側誤差があればバックラッシは減少します。
負(マイナス)側誤差が大きくなりすぎると、バックラッシがなくなって、歯車を組むことができなくなります。
図8.8 歯車箱の中心距離誤差による歯当たり
(3)ウォームホイールの取付位置誤差
図8.9のように、ウォームホイールに取付位置誤差があると、歯当たりは歯の端の方向に移動します。
この歯当たりの移動する方向は、ウォームホイールの取付位置誤差の方向と一致します。
この誤差はバックラッシの大きさにも影響し、誤差が増加すると、バックラッシは減少する傾向にあります。
この取付位置誤差は、組立時のシム調節などにより、修正することができます。
図8.9 ウォームホイールの取付位置誤差による歯当たり
こちらの技術資料は冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があります。
最新情報は最新カタログでご確認下さいますよう、お願いいたします。

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