歯車の潤滑油
13 歯車の潤滑
13.2 歯車の潤滑油
歯車が動力を効率よく伝達し続けるには、かみ合い歯面に安定した潤滑油膜が形成されて、 金属接触をおこさせないことが必要です。 このような目的のために使用される潤滑油に要求される特性を、表13.3に示します。
表13.3 潤滑油に要求される特性
番号 | 特性 | 内容説明 |
1 | 適正な粘度 | 潤滑油は、歯車が運転される速度及び温度において適正な粘度を保ち、油膜を形成することが必要です。 |
2 | 極圧性(抗溶着性) | 潤滑油は、高い荷重を受けてすべる歯面において、焼付融着、スコーリングなど損傷を防ぐ性質が必要です。 |
3 | 酸化熱安定性 | 潤滑油は、長期間使用していると、高温とか湿気などにより酸化しますから、これに対しては高い安定性が必要です。 |
4 | 水分離性 | 潤滑油には、運転・休止などによる温度変化によって水蒸気が凝結して水が混入しますから、これを沈澱分離する性質が必要です。 |
5 | 消泡性 | 潤滑油は、歯車の回転によりかくはんされて泡立つと油膜の形成が悪くなりますから、優れた消泡性が必要です。 |
6 | 防食防錆性 | 潤滑油の中に、錆などが混入すると、これにより歯面が摩耗したり、潤滑油の酸化を早めますから、この性質が必要です。 |
(1)潤滑油の粘度
潤滑油の選定において最も重要なことは、適正粘度の潤滑油を選ぶことです。この粘度については、JIS K 2001工業用潤滑油粘度分類に規定されている、工業用潤滑油ISO粘度グレードを表13.4に示します。
表13.4 工業用潤滑油ISO粘度グレード(JIS K2001)
ISO 粘度グレード | 中心値の動粘度 10-6m2/s(cSt) (40℃) | 動粘度範囲 10-6m2/s(cSt) (40℃) | |
ISO VG 2 | 2.2 | 1.98以上 | 2.42以下 |
ISO VG 3 | 3.2 | 2.88以上 | 3.52以下 |
ISO VG 5 | 4.6 | 4.14以上 | 5.06以下 |
ISO VG 7 | 6.8 | 6.12以上 | 7.48以下 |
ISO VG 10 | 10 | 9.00以上 | 11.0以下 |
ISO VG 15 | 15 | 13.5以上 | 16.5以下 |
ISO VG 22 | 22 | 19.8以上 | 24.2以下 |
ISO VG 32 | 32 | 28.8以上 | 35.2以下 |
ISO VG 46 | 46 | 41.4以上 | 50.6以下 |
ISO VG 68 | 68 | 61.2以上 | 74.8以下 |
ISO VG 100 | 100 | 90.0以上 | 110以下 |
ISO VG 150 | 150 | 135以上 | 165以下 |
ISO VG 220 | 220 | 198以上 | 242以下 |
ISO VG 320 | 320 | 288以上 | 352以下 |
ISO VG 460 | 460 | 414以上 | 506以下 |
ISO VG 680 | 680 | 612以上 | 748以下 |
ISO VG 1000 | 1000 | 900以上 | 1100以下 |
ISO VG 1500 | 1500 | 1350以上 | 1650以下 |
ISO VG 2200 | 2200 | 1980以上 | 2420以下 |
ISO VG 3200 | 3200 | 2880以上 | 3520以下 |
(2)潤滑油の選定
ギヤー油の種類は、用途によって工業用は2種類、自動車用は3種類に分け、更に粘度グレードによって細分されています。(表13.5はJIS K 2219 - 1993 ギヤー油の規格より抜粋)
表13.5 ギヤー油の種類と用途
種類 | 用途 | ||
工業用 | 1種 | ISO VG 32 ISO VG 46 ISO VG 68 ISO VG 100 ISO VG 150 ISO VG 220 ISO VG 320 ISO VG 460 | 主として一般機械の比較的軽荷重の密閉ギヤーに用いる。 |
2種 | ISO VG 68 ISO VG 100 ISO VG 150 ISO VG 220 ISO VG 320 ISO VG 460 ISO VG 680 | 主として一般機械・圧延機などの中・重荷重の密閉ギヤーに用いる。 | |
歯車装置に使用する適正粘度の潤滑油(適油)の選定についてはJIS, JGMA, AGMAなどの規格や潤滑油メーカーの資料及びWeb サイトの情報が参考になります。表13.6には、潤滑油メーカーが推奨する密閉式歯車の適正粘度を示します。
表13.6 密閉式歯車の適正粘度推奨値
ピニオン回転数(rpm) | 馬力 (PS) | 減速比10以下 | 減速比10を超え | ||
cSt(40℃) | ISO粘度グレード | cSt(40℃) | ISO粘度グレード | ||
300以下 | 30以下 | 5~234 | 150,220 | 180~279 | 220 |
30~100 | 180~279 | 220 | 216~360 | 220,320 | |
100以上 | 279~378 | 320 | 360~522 | 460 | |
300~1,000 | 20以下 | 81~153 | 100,150 | 117~198 | 150 |
20~75 | 117~198 | 150 | 180~279 | 220 | |
75以上 | 180~279 | 220 | 279~378 | 320 | |
1,000~2,000 | 10以下 | 54~117 | 68,100 | 59~153 | 68,100,150 |
10~50 | 59~153 | 68,100,150 | 135~198 | 150 | |
50以上 | 135~198 | 150 | 189~342 | 220,320 | |
2,000~5,000 | 5以下 | 27~36 | 32 | 41~63 | 46 |
5~20 | 41~63 | 46 | 59~144 | 68,100 | |
20以上 | 59~144 | 68,100 | 95~153 | 100,150 | |
5000以上 | 1以下 | 9~31 | 10,15,22 | 18~32 | 22,32 |
1~10 | 18~32 | 22,32 | 29~63 | 32,46 | |
10以上 | 29~63 | 32,46 | 41~63 | 46 | |
注1.歯車の種類は平歯車、はすば歯車、かさ歯車、及びまがりばかさ歯車、運転温度(油温)は10~50℃の場合
注2.給油方式は、循環又ははねかけ式とする。
注2.給油方式は、循環又ははねかけ式とする。
潤滑油の用途(平歯車、ウォーム用等)と使用条件(装置の大きさ、周囲温度等)から適正粘度を選定してから、各潤滑油メーカーの資料から潤滑油を決めます。表13.7は代表的な潤滑油メーカーの工業用ギヤー油の一例を示します。
表13.7 工業用ギヤー油の一例
JIS ギヤー油 | 出光 | コスモ | ジャパンエナジー | ||
工業用 | 1種 | ISO VG 32 | ダフニースーパー マルチオイル32 | NEW マイティスーパー32 コスモオルパス32 | JOMO レータス32 |
ISO VG 68 | ダフニースーパー マルチオイル68 | NEW マイティスーパー68 コスモオルパス68 | JOMO レータス68 | ||
ISO VG 100 | ダフニースーパー マルチオイル100 | NEW マイティスーパー100 コスモオルパス100 | JOMO レータス100 | ||
ISO VG 150 | ダフニースーパー マルチオイル150 | NEW マイティスーパー150 | JOMO レータス150 | ||
2種 | ISO VG 100 | ダフニースーパー マルチオイル100 | コスモギヤーSE100 コスモECO ギヤーEPS100 | JOMO レダクタス100 | |
ISO VG 150 | ダフニースーパー マルチオイル150 | コスモギヤーSE150 コスモECO ギヤーEPS150 | JOMO レダクタス150 | ||
ISO VG 220 | ダフニースーパー マルチオイル220 | コスモギヤーSE220 コスモECO ギヤーEPS220 | JOMO レダクタス220 | ||
ISO VG 320 | ダフニースーパー ギヤオイル320 | コスモギヤーSE320 コスモECO ギヤーEPS320 | JOMO レダクタス320 | ||
ISO VG 460 | ダフニースーパー ギヤオイル460 | コスモギヤーSE460 コスモECO ギヤーEPS460 | JOMO レダクタス460 | ||
ISO VG 680 | ダフニースーパー ギヤオイル680 | コスモギヤーSE680 | JOMO レダクタス680 | ||
JIS ギヤー油 | 昭和シェル | コスモ | ジャパンエナジー | ||
工業用 | 1種 | ISO VG 32 | シェル テラスオイルC 32 | スーパー マルパスDX32 | Mobil DTE Oil Light |
ISO VG 68 | シェル テラスオイルC 68 | スーパー マルパスDX68 | Mobil DTE Oil Heavy Medium | ||
ISO VG 100 | シェル テラスオイルC 100 | スーパー マルパスDX100 | Mobil DTE Oil Heavy | ||
ISO VG 150 | シェル テラスオイルC 150 | スーパー マルパスDX150 | Mobil Vacuoline 528 | ||
2種 | ISO VG 100 | シェル オマラオイル100 | ボンノックM100 ボンノックAX100 | Mobil gear 600 XP 100 | |
ISO VG 150 | シェル オマラオイル150 | ボンノックM150 ボンノックAX150 | Mobil gear 600 XP 150 | ||
ISO VG 220 | シェル オマラオイル220 | ボンノックM220 ボンノックAX220 | Mobil gear 600 XP 220 | ||
ISO VG 320 | シェル オマラオイル320 | ボンノックM320 ボンノックAX320 | Mobil gear 600 XP 320 | ||
ISO VG 460 | シェル オマラオイル460 | ボンノックM460 ボンノックAX460 | Mobil gear 600 XP 460 | ||
ISO VG 680 | シェル オマラオイル680 | ボンノックM680 ボンノックAX680 | Mobil gear 600 XP 680 | ||
(3)ウォームギヤ油の選定
潤滑油の用途(平歯車、ウォーム用等)と使用条件(装置の大きさ、周囲温度等)から適正な粘度が選定できましたら各潤滑油メーカーの資料等で銘柄を確定してください。
表13.8には、JGMA405-01(1978)円筒ウォームギヤの強さ計算式にて推奨するウォームギヤの適正粘度の参考値を示します。
表13.9は代表的な潤滑油メーカーのウォームギヤ用ギヤー油の一例を示します。
表13.8には、JGMA405-01(1978)円筒ウォームギヤの強さ計算式にて推奨するウォームギヤの適正粘度の参考値を示します。
表13.9は代表的な潤滑油メーカーのウォームギヤ用ギヤー油の一例を示します。
表13.8 ウォームギヤ潤滑油の適正粘度参考値
単位:cSt(37.8℃)
運転油温 | 滑り速度 m/s | |||
運転最高油温 | 始動時油温 | 2.5未満 | 2.5以上5未満 | 5以上 |
0℃以上 10℃未満 | -10℃以上 0℃未満 | 110~130 | 110~130 | 110~130 |
0℃以上 | 110~150 | 110~150 | 110~150 | |
10℃以上 30℃未満 | 0℃以上 | 200~245 | 150~200 | 150~200 |
30℃以上 55℃未満 | 0℃以上 | 350~510 | 245~350 | 200~245 |
55℃以上 80℃未満 | 0℃以上 | 510~780 | 350~510 | 245~350 |
80℃以上 100℃未満 | 0℃以上 | 900~1100 | 510~780 | 350~510 |
表13.9 ウォームギヤー油の一例
粘度区分 | 出光 | コスモ | ジャパンエナジー |
ISO VG 150 | ダフニースーパー マルチオイル150 | - | JOMO レダクタス150 |
ISO VG 220 | ダフニースーパー マルチオイル220 | コスモギヤーW220 | JOMO レダクタス220 |
ISO VG 320 | ダフニースーパー ギヤオイル320 | コスモギヤーW320 | JOMO レダクタス320 |
ISO VG 460 | ダフニースーパー ギヤオイル460 | コスモギヤーW460 | JOMO レダクタス460 |
ISO VG 680 | ダフニースーパー ギヤオイル680 | - | JOMO レダクタス680 |
粘度区分 | 昭和シェル | 新日本石油 | モービル |
ISO VG 150 | シェル オマラオイル150 | ボンノックM150 | モービルギア629 |
ISO VG 220 | シェル オマラオイル220 | ボンノックM220 | モービルギア630 |
ISO VG 320 | シェル オマラオイル320 | ボンノックM320 | モービルギア632 |
ISO VG 460 | シェル オマラオイル460 | ボンノックM460 | モービルギア634 |
ISO VG 680 | シェル オマラオイル680 | ボンノックM680 | モービルギア636 |
(3)グリースの選定
グリースは、用途によって7種類に分類され、更に種別(成分及び性能)及びちょう度番号(混和ちょう度範囲又は粘度範囲)によって細分されています。
表13.10には、グリースの種類の一部(4種類)を示します。(JIS K 2220:2003 グリースより抜粋)
表13.10には、グリースの種類の一部(4種類)を示します。(JIS K 2220:2003 グリースより抜粋)
表13.10 グリースの種類
種類 | 使用温度範囲℃ | 参考 | ||||||
用途別 | 種別 | ちょう度番号 | 使用条件に対する適否 | 適用例 | ||||
荷重 | 水との接触 | |||||||
低 | 高 | 衝撃 | ||||||
一般用 グリース | 1種 | 1号、2号、3号、4号 | -10~60 | 適 | 否 | 否 | 適 | 一般低荷重用 |
2種 | 2号、3号 | -10~100 | 適 | 否 | 否 | 否 | 一般中荷重用 | |
集中給油用 グリース | 1種 | 00 号、0 号、1 号 | -10~60 | 適 | 否 | 否 | 適 | 集中給油式 中荷重用 |
2種 | 0 号、1 号、2 号 | -10~100 | 適 | 否 | 否 | 適 | ||
3種 | 0 号、1 号、2 号 | -10~60 | 適 | 適 | 適 | 適 | ||
4種 | 0 号、1 号、2 号 | -10~100 | 適 | 適 | 適 | 適 | ||
高荷重用 グリース | 1種 | 0 号、1 号 2 号、3 号 | -10~100 | 適 | 適 | 適 | 適 | 衝撃高荷重用 |
ギヤ コンパウンド | 1種 | 1号(1)、2号(1) 3号(1) | -10~100 | 適 | 適 | 適 | 適 | オープンギヤ及びワイヤロープ用 |
注(1)この番号は、動粘度によって分類したものである。
備考
- 一般用グリース1種は、主として原料基油とカルシウム石けんとからなり、耐水性が良好なものである。
- 一般用グリース2種は、主として原料基油とナトリウム石けんとからなり、耐熱性が良好なものである。
表13.11 は、代表的なメーカーのグリース一覧表です。
表13.11 グリース
品名 | 品番 | ちょう度 | 固体潤滑剤の種類 | 容器 | 色 | 特長 |
スーパースプレーグリース | GJS-1001 | エアゾール | 有機モリブデン | 300ml スプレー缶 | 淡黄色 | リチウムグリースに有機モリブデンを配合した黒くないスプレーグリースです。 |
ペーストスプレー | GJS-0801 | エアゾール | 二硫化モリブデン | 300ml スプレー缶 | 灰黒色 | 二硫化モリブデンが高濃度に配合されていて、初期なじみや耐焼付性に優れています。 |
ドライコートスプレー | GJS-0901 | エアゾール | 二硫化モリブデン | 300ml スプレー缶 | 灰黒色 | スプレーで簡単に乾燥被膜を作れるので油類を嫌う箇所に最適です。 |
リチウムグリース | LM-0616 | №2 | - | 16kg ペール缶 | 淡黄色 | 最も欠点の少ない万能タイプのグリースであり、低荷重ギヤー用としても最適です。 |
EPグリース | LM-0633 | №2 | - | 16kg ペール缶 | 淡黄色 | リチウムグリースに極圧添加剤(EP剤)を配合し、耐荷重性に優れています。 |
アドマックギヤ― | LM-45 | №2 | 二硫化モリブデン | 16kg ペール缶 | 灰黒色 | 粘ちょう性、付着性を持たせたウレアグリー スであり、耐水性、耐熱性、耐摩耗性に優れています。 |
Uグリース | LM-160 | №2 | 二硫化モリブデン | 16kg ペール缶 | 淡褐色 | 汎用タイプのウレアグリースであり、耐熱性、耐水性、防錆性に優れています。 |
防錆グリース | LM-190 | №2 | - | 16kg ペール缶 | 淡褐色 | 特殊複合石けんを増ちょう剤としたグリースであり、防錆性のみならず、耐荷重性、耐水性、機械的安定性に優れています。 |
白色グリース | LM-3302F | №2 | フッ素化合物 (PTFE) | 16kg ペール缶 | 白色 | 摩擦係数が極めて低いPTFEを配合した合成油ベースのエンプラ用グリースです。 |
こちらの技術資料は冊子カタログ3013(2015年)当時のデータであり、一部データが古い場合があります。
最新情報は最新カタログでご確認下さいますよう、お願いいたします。
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